-日本に相応しいGAP規範の構築とGAP普及のために-

株式会社Citrus 株式会社Citrusの農場経営実践(連載44回)
~みかん収穫作業アルバイトが集まらない~

佐々木茂明 一般社団法人日本生産者GAP 協会理事
元和歌山県農業大学校長(農学博士)
株式会社Citrus 代表取締役

 会社をはじめて毎年苦労するのは収穫期の作業人員確保である。昨今どの業界でも働き手不足が聞かれるが、今年初めて農業人材派遣会社と人材募集サイトのセールスが我が社にやってきた。人材派遣の会社名はYUIME株式会社(本社東京)で外国人労働者を派遣する会社である。和歌山県のJAを対象にセールスに入ったと聞いた。その受入条件は収穫作業にしては時給が1500円と高く、住居確保、月190時間以上の労働補償、最短契約期間3ヶ月とのことで、みかん収穫作業では採用が難しい条件だったのでお断りした。過去に外国人技能実習生を入れたが、それとは内容が違っていて、雇用ではなく社員派遣だという。外国人労働者派遣の話ははじめて知ったが10年くらい前からやっていると聞いた。また、求人サイトへの登録料は月額12,000円でヒット率は高いですという某有名サイト、大手の企業なら正社員募集にはいいと思うが、小さな農業生産法人には無理がある。なぜならば年契約であり、最低でも毎年144,000円かかる。2ヶ月間の短期契約を交渉したがだめだった。和歌山県内には契約者が60社あるが農業分野がないので我が社のHPをみて来たようだ。


 我が社の実情は後で示すが、今年は地元からアルバイトを募集することとし、経費のかからないオーソドックスなハローワークへの登録と、無料の求人サイト「インディード」を使って採用を試みている。現在2件の応募があり1件成立した。まだまだ足りないが、これまでの取り組みでなんとか解決できる可能性が見えてきた。これらの現状から過去の経験談をお伝えして、人員確保の困難さをお伝えし、よい方法があれば読者からの情報が欲しい。

 さて、人手不足と一言で表現してしまうが、ここ10年間の経験からアルバイト雇用の形態が変わってきた。10年前には和歌山県が主宰する「グリーンサポート」という無料求人サイトに登録すれば多数の応募があり、応募者全員を呼び寄せ、仲間の農家への紹介もしながら3年間はうまく運営できた。また、宿舎として古民家2戸を借り受け、共同生活をしてもらってもOkayだった。多少メンタルな問題もあり、途中で中断したこともあったが、友達と一緒に来るパターンや最初に来た人が友達を呼び寄せるといった仲間での参加が多かったので運営しやすかった。しかし、このパターンで4年目に入った時は古民家の生活で水回りの不備を訴える人も現れ、また古民家の耐震問題などもあり、5年目には宿舎としてアパート2室を会社で借り受けて対応した。

 このころから県主催の求人サイトからの応募はなく、急遽有料の求人サイト「農家のお仕事ナビ」や同様のサイトを活用して募集した。すると全国から応募があったが、早めに契約できた人のドタキャンということが多くなった。やむを得ず収穫期に入ってから応募があった人を無条件で採用したが、これも到着直後にキャンセルや3日でいなくなったケースもあった。それでも3名程度は確保出来た。3年間は問題無くアパートの確保で対応出来た。しかし、この頃になるとグループでの応募はなく、単独の応募となったのでアパート2室では共同生活が難しくなった。2019年にはいつも利用していたアパートに空き部屋がなく不動産屋に断られた。やむなく予備に設定してある1室を大家さんに無理やり頼んで確保した。アパートは女性専用とし、リピーターで4年目の就農を目指す青年を我が家の離れの2階で宿泊させ対応した。

 筆者はこの年からこれまでのような繁忙期の雇用形態を問題視するようになった。悩んでいるとき県農林大学校就農支援センターから25日間の農家実習生2名を迎えることができ、労力として大変助かった。翌年の2020年には実習に入った女性を社員として新規採用した。その直後に、有田川町の地域おこし協力隊員の青年の農業研修依頼を受けいれたことで作業人員がそろった。また、この年も県農林大学校就農支援センターから農家実習生を迎えることができ、繁忙期を乗り越えた。2021年は年間を通じで新規就農を目指す青年の研修を受けたので、会社設立時の構想にある人材育成を目指した農業形態になった。しかし、同年、会社のポリシーとしては成功だが、ベテラン社員の自立のための退社は痛かった。なんとか、就農支援センターからの前年の実習生を新規採用できたことで会社運営を継続できた。

 そうして今年2022年は県農林大学校就農支援センターからの実習生もなく、地域おこし協力隊員の自立準備に入ったため会社で独占指導はなくなった。また、1年間の研修生も11月末で終わりになることから、新たなアルバイト雇用を入れないと回っていかない状況にもどった。この夏から、アパート確保のため不動屋さんを回ったがアルバイト用の短期契約ができなくなっていた。短期で借りられるちょっと高めのアパートを見つけたが、2ヶ月契約だと約2倍の家賃13万円を請求された。それにより今年は全国募集を諦め、通勤可能な範囲での募集とし、時給1,200円にアップして募集したところ、地元の自営業の青年(26才)を確保することが出来た。また、地域おこし協力隊員にも時間の許す限りご夫婦で応援してもらえることとなり、ちょっと安心した。まだ2名くらい確保しないと豊作年(今年)を切り抜けられるかが問題であるが、我が社と流通業界と連携したグロワー/シッパーの仕組みでなんとか切り抜けるしかないと考えている。

(注:写真のメンバーで今年は2名を除いて5名は継続し、これに1名プラスが見込まれる。)

2022/11

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