-日本に相応しいGAP規範の構築とGAP普及のために-

『GAP普及ニュース 巻頭言集』

 普及ニュースに掲載された、有識者による巻頭言。

『民間の農業塾でGAP教育を開始』

GAP普及ニュース26号(2012/5)掲載

佐々木茂明
一般社団法人日本生産者GAP協会 理事
株式会社Citrus 代表取締役

 私は、この3月31日で和歌山県農業大学校を最後に県職員を退職し、果樹農園で農業を始めました。「これまで長年、農業後継者の養成を目標として仕事をしてきた以上、退職後は農業に就かないと嘘になる」と、社会人課程(離転職者職業訓練制度農業科)の終了式で述べてしまいました。取材に当たっていた日本農業新聞の記者が、取材後、「校長先生は本当に農業に就くのですか」と尋ねてきましたので、「勿論です」と答えたのが弾みで、農業生産法人を目指した株式会社Citrusを4月2日に設立しました。

 また同時に、退職後は農業改良普及活動などでお世話になった和歌山県の有田地方で「更なる農業後継者の養成ができないものか」と考えていたこともあり、農業生産法人設立準備とほぼ同時に、厚生労働省が平成23年5月20日公布の「職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律」の「求職者支援制度」を活用した「農業塾」の開設も考えていました。

  農業生産法人の設立は、日頃農業大学校の非常勤講師としてお世話になっていた流通業界の方のご支援と和歌山県農業会議のご指導により株式会社を設立した後、農業生産法人化の申請も無事終えることができました。

K.E.G.職業訓練センターの和歌山駅前校

  また、念願の「農業塾」は、各種の職業訓練を手がけているK.E.G(民間の教育支援センター)とのコラボで事業が認可され、4月24日にスタートとなりました。

  「農業塾」の開設の鍵は、大学校で教えていたGAP(適正農業管理)の教科にありました。K.E.Gと教育カリキュラムについて検討していた中で、一般社団法人日本生産者GAP協会が2011年5月に出版しました「日本GAP規範」の本を示したところ、K.E.Gの代表に大変興味を持っていただきました。その後、K.E.G社員らが農業大学校を訪れた際に、私がGAP教育をはじめ農業教育への思いを伝えたことで、具体的な事業申請に進むことができました。民間からみればGAP規範は非常に大切なツールであり、「教育価値は充分にある」と判断されたように思います。

  その後、K.E.Gが求職者支援制度の申請先である独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構・和歌山職業訓練センター」へ積極的にアプローチをしたことにより、事業として採択されました。

  株式会社Citrusは、地域の遊休農地(みかん園)となってしまう恐れのあるみかん園を預かり、樹園地の荒廃を食い止める役目を果たすのと同時に、そのみかん園を管理するための人材育成を行うことを目的としています。当面は、農業塾修了者を何らかのかたちで地域に定着させるため、雇用を創出しなければなりません。そこで、修了者を弊社の社員として採用たり、遊休みかん園を借り受けて、そこを使用した就農支援なども考えています。そのためにも、農業を始めるに当たりGAPの教育から入り、地域の既存の農家と違う角度から評価を受けたいと考えています。

  まだまだ全てがスタートしたばかりで、全く実績はありませんが、民間の教育機関で認められたGAPの教育課程に自信をもって、これから多くの人に強くアピールをしながら「農業塾」を成功させ、弊社の運営目的を達成していきたいと考えています。

  そして、見える形でGAPの「環境に良い農業」の実践を通して、多くの方々にGAPを普及していきたいと思っています。

図1 法人運営イメージ

GAP普及ニュースNo.26 2012/5