-日本に相応しいGAP規範の構築とGAP普及のために-

家族農業のためのGAP(適正農業管理)
  国際連合食糧農業機関(FAO)のGAPガイドライン紹介

田上隆一  一般社団法人日本生産者GAP協会 理事長

 1980年代に欧州でGAP概念が誕生して、「自然資源への汚染をなくす環境と人にやさしい農業(GAP)」が推進された「GAPステージ1」の時代から、グローバル化で世界中の農産物が先進諸国に輸出される2000年代になると、欧州の食品企業は、農産物の輸出国に欧州の適正農業規範(Co-GAP)と食品衛生管理基準(HACCP)の遵守を要求し、欧州に輸出する生産者農場の監査を義務付けました(GAPステージ2)。農産物の国際取引条件を欧州農業者と公平にということです。

出典

 日本では1999年からイギリスにリンゴを輸出していた青森県の「片山りんご」が2002年に認証取得を要求され、2004年にEUREPGAPというGAP認証を取得しました。この動きは、欧州と北米・中南米、アフリカ、オセアニアの農産物輸出国で2010年までに定着しました。各国政府が輸出対策として積極的に取組んだ結果ですが、中南米やアフリカ等では、国連食糧農業機関(FAO)が農業振興の立場から指導的に関わったようです。

 世界のこのような動きに対して、安全な農産物取引を強く意識した「食品安全GAP(ジーエーピー)」と称する認証制度で始まった日本のGAP対策では、GAPで最も肝心な「自然環境の持続可能性」や「統合的農業システム」の推進がおろそかにされてきました。「GAPステージ1」の時代体験がなかったことが大きな要因です。

 20年前に、世界中の農家が戸惑いながらもGAPステージに立てたGAP教育の教科書を改めて確認することが、今の日本に必要です。

目次

ガイドライン表紙

序章

 このマニュアルは、ラテンアメリカ・カリブ海FAO地域事務所の農業班によって作成されました。
 この作業の目的は、適正農業管理(GAP)の基本概念を広め、生産システムを持続可能な農業と生態学的に安全なものに導くこと、そして、より高品質で無害な農産物を生産し、市場へのアクセスを通じて食料安全保障に貢献することで収入を産み出すことです。そして、生産者とその家族の労働条件を改善します。

 このマニュアルは、農業技術者と普及員、生産者組織、農村部の学校教師と学生、都市部および都市近郊の市民、個々の家族農業グループ全般を対象としています。

Ⅰ.適正農業管理(GAP)とは何ですか?

GAPの本質

●消費者は、安全な食品の入手と、環境の持続性や労働者の健康に配慮した農業に、これまで以上に関心を持っています。
●適正農業管理は上記の文脈で生まれ、単純に、当たり前の農業を行い、そのことを保証すること、と定義できます。
●GAP(Good Agricultural Practices)とGMP(Good Manufacturing Practices)は、生産、加工、食品の輸送に適用される一連の原則、規則、および技術的な推奨事項であり、人間の健康管理、環境保護、労働条件とその家族の改善に対応しています。

GAPの恩恵を受けるのは誰か?

●ヘルシーで高品質、栄養豊富な食品を生産し、より良い方法で市場にアクセスするため農産物に付加価値を生み出す農家とその家族。
●持続可能な生産で、より良い安全な品質の食品を楽しむことができる消費者。
●より良い環境から様々な恩恵を受ける一般の住人。

GAPの効能(もたらすもの)は何か?

Ⅱ.なぜ適正農業管理(GAP)を行わなければならないのか?

Ⅲ.適正農業管理はどのように実施するのか?

1.男性と女性労働者の労働条件をどのように改善できるのか?

2.播種に最適な場所はどこか?

3.土壌はどのように準備すべきか?

4.作物はどのように取り扱うか?

5.水はどのように使用し管理するか?

6.農薬はどのように使用するべきか?

7.どの肥料をどの程度使用すればよいか?

8.有機物(動物・植物由来)肥料はどのように使用すべきか?

9.農場内の動物について

10.収穫で最も大切なことは何ですか?

11.食品の輸送はどのように行うべきか?

12.農産物を販売する際にどのようなことを考慮すべきか?

13. より良い農産物の管理のために必要な記録とは何か?

14. 農産物がGAP管理されていたことをバイヤーはどのようにして知るのか?

------------ GAP普及ニュースNo.68~73 2022/1~2023/1