-日本に相応しいGAP規範の構築とGAP普及のために-

『セミナー受講者の修了レポート(感想や考察)の紹介』
 青果物集出荷施設(選果場等)衛生管理セミナー

株式会社AGIC 事業部

受講者 JAグループ営農支援部職員

 私は、食品の安全安心対応の担当者として、質問対応や資料作成のなかで衛生管理に関する知識が足りていないと感じていた。その中で今回のセミナーを受講することで、衛生管理の基本的な考え方から、実際の青果物選果場での取り扱いの仕方など、日本国内やスペインなど海外の例を比較しながら確認することで、理解を深めることができた。特に自分の認識を改めることができた点は以下である。

 まず、衛生管理の本質は、安全安心を害するリスクを発見し、管理し、管理がうまくいかない場合は改善をするという点である。つまり、衛生管理は加熱殺菌や異物検出など、発生したリスクをなくすものというよりは、むしろ、衛生管理計画やルールの見直し等を行うことでリスクコントロール(内部統制)を充実させ、リスクの発生自体を抑えるアプローチに本質があるということである。実際に講義のなかで、スペインの選果場の優良事例では、施設内部を清潔作業区域と汚染作業区域に分けていたり、品目ごとに保管場所の定置化が行われていたりして、ハザードの発生自体を抑える仕組みが構築されていた。日本の選果場ではほとんどできていない仕組みであるとのことだったが、このような仕組みが構築され、その選果場にあった衛生管理ができれば、他の産地との衛生管理による差別化ができると感じた。

  また、講義のなかで、BPA(最も良いやり方は何か)を常に考えながら、その選果場に合った衛生管理計画や、それを具体的にした手順書を作成することは、衛生管理を通じた、その産地のアイデンティティの構築につながると学んだ。しかし、BPAはそれぞれの人の価値観によってずれが生じてしまい、さらに衛生管理上良くないことでも、現場で当たり前に行われていることは気づきにくい。そこで、気づかせるための教育を積極的に行うことはもちろん、職場での話し合いを通じて意見をくみ取り、作業現場の人も巻き込みながら衛生管理を実践していくことで、より組織が一体となって取り組めると考えた。

  選果場での食品衛生管理は、生産者と消費者を結ぶ信頼の架け橋である。今後、日本の農産物の世界への輸出が増えていく中で、形や味だけではなく、衛生管理で信頼されずに売れなくなるということがないように、食品衛生管理の重要性について、今回学んだことを具体的に実践するとともに関係組織に伝えていくつもりである。

GAP普及ニュースNo.67 2021/10