-日本に相応しいGAP規範の構築とGAP普及のために-

株式会社Citrus 株式会社Citrusの農場経営実践(連載11回)
~農地の中間管理機構~

佐々木茂明 一般社団法人日本生産者GAP 協会理事
元和歌山県農業大学校長(農学博士)
株式会社Citrus 代表取締役

 農林水産省は、減反政策を見直し、耕作放棄地の削減を図るために、担い手への農地の集積を狙って、農地の中間管理機構の整備を市町村に迫っています。永年作物を管理する弊社でも、かなりこの制度に期待を寄せています。


図 農林水産省HPより引用

  果樹地帯における農地の流動性の現状を見ていると、「農地を管理してくれないか」との問合せや申し出が後を絶たないが、そのような農地は、一般に小規模で点在していて、その周辺がしっかり管理されているため、絵に描いたような集積は非常に難しいという現実があります。

  いつもそうですが、基盤整備に関する国の政策は水田地帯のものであり、永年作物を栽培する地帯には適合しません。しかし、それを理由になにも行動しない永年作物地帯は、取り残されてしまうと考えています。

  そこで弊社は、弊社が管理している周辺農地を、管理してくれる農家に利用権の設定を呼びかけています。これはなかなか困難な働きかけですが、自力で取り組むしかありません。幸い、3月初旬に一件成立しました。弊社が管理する農地に隣接した農地を確保したのですが、この農地は弊社の園内道をそのままで活用できる環境になり、樹園地の合理化ができました。弊社の周辺樹園地は基盤整備がされておらず、進入路の整備もされていない農地が多く、そのような農地を借り受けると、後で大変苦労をします。



   当初、規模拡大を急ぐあまり、それらの環境条件をほとんど考慮せずに借り受けてしまったことがあります。現在その農地は、両者合意で、利用権を破棄したという経緯があります。

  その事例として、連載4で紹介しましたが、現状においてもよく似た課題があります。そのときの直接的な課題は「農業施設の老朽化」でしたが、もう一つの課題は「借り受けた農地を簡単に基盤整備できない」ということにありました。圃場への侵入道が地主の使用する倉庫を横切るかたちだったので、別の進入路を確保しようと検討したのですが、多額の資金が必要となるため、断念しました。

   現状においても同様の課題があります。借り受けている農地への進入路が狭く、軽四輪しか通れないため、進入路を拡幅したいと考え、近隣の所有者に相談したところ、同じような問題をもっていましたが、「今更進入路を変更、拡幅するのは無理だ」ときっぱり断られました。

   借り受けた担い手が農地の変更などの課題を単独で解決するのは非常な困難を伴います。これが永年作物を栽培する地帯では、同時に農地の集積、基盤整備を行おうとするとさらに困難と考えます。有田地域のみかん産業を持続するためには、これらの課題を解決するための政策と農家の意識改革が同時に進行しない限り、みかん産地として滅びてしまうかもしれません。 話は飛躍しますが、日本の農業は、農産物の生産量が安定しないので、流通業、量販店、外食産業などは外国産の農産物に頼る傾向が強いという現状があります。

   安全・安心の国産農産物を一定量確保するためには、一刻も早く農地の中間管理機構を整備し、この構想が「絵に描いた餅」にならないようにすることを切に期待します。

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