-日本に相応しいGAP規範の構築とGAP普及のために-

株式会社Citrus 株式会社Citrusの農場経営実践(連載47回)
~やっと本来の人材育成活動が解禁となった~

佐々木茂明 一般社団法人日本生産者GAP 協会理事
元和歌山県農業大学校長(農学博士)
株式会社Citrus 代表取締役

  Citrusの定款にうたっている人材育成活動がやっと再開できた。今年1月には地元の有田中央高校生のインターンシップを開催した。総合学科に所属する農業系列を目指す1年生で、2年生になると本格的に農業を選択するという生徒である。新型コロナウイルスで中断していたが3年ぶりの実施となった。4名が参加し、トータルで3日間のインターンシップである。今年は初日が大雪になり園地での実習はできなかったが、事務所での意見交換が面白かった。個々に農業系列を選択する理由を述べてもらった。3名が農家の子弟で農業を後継するためとはっきり発言し、頼もしく感じた。また、1名は非農家であるが農業を支援する仕事に就くためと述べた。

 社員も意見交換に参加させ、著者としては日頃聞けない社員の本音をうかがうことができた。その本音とは、「これまで農業に就くことを思案していろいろな仕事を経験してきたが、現在に至って農業に就いている。そして現在は安定して仕事が持続できている」など、聞いていて著者としても嬉しく感じた。生徒は勿論興味深く聞いていたので将来の参考になればと思った。

 翌日は晴天となり八朔樹の伐採をチェーソーを使って実習体験させた。作業には危険がつきもので初めての人にはさせないものだが、社員が1人1人に農作業の安全確保の大切さを教えながら実行させた。

図1 有田中央高校生と意見交換
図2 有田中央高校生のインターンシップ実習

 後日、担当教員から、女子生徒がインターンシップでの体験を発表し、生徒一同の感心を集めたと報告を受けた。また、著者が学校を訪れたとき、その発表した生徒に呼び止められ、代表して発表したことの報告とお礼を告げられた。農林大学校の教員を経験している著者としては嬉しいシーンである。

 また、過去に実施したインターンシップでも効果があった。農林大学校の新2年生が弊社株式会社Citrus に入社したいとの情報が農林大学校より入り、面接した。入社希望の学生は、高校生時代の我が社でのインターンシップが決めてとなり就職希望となったとのこと、その学生には採用の内定を通知したが、条件として1年半の海外農業研修でスキルアップするよう進めた。2~3日のインターンシップ経験が人生を左右することの大きさを実感しているからだ。

   更に、地域の若者を集めての勉強会も再開した。今回は農林大学校の卒業生が経営する肥料店の主催で、「匠の技の認定」を受けた農業大学校卒業生を講師に弊社のみかん園で剪定講習会を実施、参集者は28名で新規就農者からベテランの元営農指導員まで参加があり、賑わった。このような勉強会がやっと開催できる環境となった。

図3 剪定講習会(Citrus園)

 また、4月に開始した地域おこし協力隊員の2名は、ゴールデンウイーク明けの第一声で、「ストレスなしに出勤できた」と社員に話したと聞いてこれにも一安心。近年、思うに人材育成はメンタル管理から始まることを実感している。これから社員及び研修生のスキルアップのための勉強会をもっと開催していきたと考えている。

2023/5

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